賃金に対して高い家賃、労働者を使い捨て感覚の経営者、慢性化する渋滞、建設ラッシュによる埃… 否定的なことを言うようで申し訳ないが、マルタでのワーホリはやめた方がいい。 2026年1月から、マルタは日本からのワーキング・ホリデー(通称:ワーホリ)の受け入れが開始した。マルタと日本の間のワーホリは長らく議題にあり、ようやく実現に至った。 こうした制度の始めには、不都合や不備がつきもので、制度が動き始めてから見える課題というのもあり、1年くらいすればまた今とは違う状況になるだろう。とはいえ、今のマルタでワーホリを勧められるかというと、そういうわけではない。 平均的なマルタの時給はおそらく7ユーロくらいで、月にだいたい1,200ユーロくらいもらえたら、社会保障を引くと、だいたい、1,000ユーロくらいに落ちつくとしよう。家賃は、1ベッドルームのアパートなら、イムシーダやグジーラでさえ、1,000ユーロは超える。ビルキルカラやアタード、南部に行けばまだマシかもしれない。アパート・シェアでさえ、月に600ユーロはみておいた方がいい。ゴゾはまだ安い。田舎での暮らしをしたいのであれば、ゴゾだが、安いからといって、マルサルフォーンやシュレンディに家を借りるのはあまり得策ではないように思う。マルタであれば、マルサやハムルーンあたりもやめておいた方が無難だろう。 また、物件は必ず現地で見るべきだ。その際に、デポジット分(預け金:家賃1ヶ月分)の現金を持っておくか、すぐにオンラインで口座送金できるように備えておいた方がいい。もし現地で即決したら、その場で即、抑えないと、あなたが内見している物件には何人もの不動産屋と顧客がいて、1時間でも隙を見せれば、すぐに物件は流れていく。不動産屋のウェブサイトにある物件は体感では大半がすでに成約されていて、いわば「釣り」である。仲介手数料(家賃の半額)をケチろうとして、オーナーとの直接契約を結ぶのは何もコネがない状態ではほぼ不可能だ。オーナーと直接、やり取りして、物件の内見に前金が必要と言われたら、それはほぼ詐欺である。お金を払った日には、とんずらされるし、警察もそんなに暇ではない。そして、あまりにも杜撰な家主も多かったため、現在では、賃貸契約を結ぶ際には公証人の署名も必要だ。 全員ではないが、「ヤバい」経営者も、マルタにはそれなりにいる。あなたは外国人であり、立場は弱い。使い捨てにされるし、給料の遅配や未払いなども当然のようにある。奴らの「明日」や「来週」は信用してはいけない。自分の思い通りにならないと逆ギレして、警察に相談するぞとか移民局に通報するぞと脅す経営者もいる。どちらかというと「搾取の島」かもしれない。同僚のネパール人、フィリピン人、インド人、コロンビア人らは耐えているかもしれないが、幻想は抱かない方が良い。マルタ政府ももちろん、お金を欲しいし、安い労働力が欲しい。 留学エージェントだって、一部の例外を除いて、マルタのことなど何も知らないし、詰まるところ、商売である。英語留学が初めてという人や、海外が初めてという人にはマルタは向いていると思う。大体の時期は海が綺麗だし、比較的、治安も良いし、なにかあってもすべて島のなかで完結する。ただ、働くという要素が加わるとまたそれは別の話である。 マルタの良いところは、タリーニャ(Tallinja)のカードがあれば、公共交通機関のバスと一部のフェリーは乗り放題ということだ。交通費は気にしなくても良い。ただ、ラッシュ時のバスは悲惨である。バスも止まってくれないし、下手したら、所構わず、ビデオ通話しながらスピーカーで話す奴ら、大音量で動画を見る奴らで溢れている。大雨になれば、とある地域では、バスの中も浸水する。マルタはかなりの自動車社会で、この小さな島の中で渋滞は日常茶飯事である。マルタ人は基本的に歩きたがらない人も多いし、いまだに、ちょっとすぐそこにパスティッツィを買いに行くために、車でひゅっと行くこともある。(そしてマルタはE Uでもトップクラスの肥満国) 交通渋滞でマルタの排ガスも恐ろしいし、クルーズ船の排気ガスも心配であるが、マルタは「お金が入ればいい」というのをあまり隠さないかのように、儲かるものにはほとんど何も考えずに突っ走る傾向にある。正義や政府の不正とか、そういったものには注力するだけ、時間の浪費であり、ひどい経営者がいたら、気持ちを切り替えて、とっとと逃げた方が良い。ここしばらく建設ラッシュが続いているマルタでは、「安全」や「衛生」という言葉は書類上にしか存在しない。そして、スリーマやサンジュリアンだけでなく、わりとどこも埃っぽい。 マルタでのワーホリに挑戦するのは、素晴らしい。挑戦することは賞賛に値するし、海外に飛び込むという経験は重要だと思う。ただ、マルタはキラキラしていない。ヨーロッパだが、ここはヨーロッパではない。控えめに言って、アラブ世界とヨーロッパの中間地点だ。そしてサバイバルである。とまれ、幸運を祈る。